フェイスブックの「Instant Articles」にまつわるニュースのタイトルを比べて考えたこと

先ごろ発表になったFacebookによる「Instant Articles」。ウェブメディアにおける変化といいますか、大きなうねりを感じる、といっては大げさでしょうか。このブログはメディア論を論じるようなものではございませんが、少し書いておきます。
(下の動画は、Instant Articlesについて報じるWall Street Journal。英語ですがInstant Articlesの実際の操作感は分かります)

今回の発表は端的にいうと、Facebook自体が、各メディアの分散型コンテント(後で述べます)を掲載しやすくする仕組みをつくった、ということではないかと。いまのところアメリカの話であり、iPhoneのFacebookアプリに限られますが、たとえばニューヨーク・タイムズが自ら選んだ記事(動画や音声を含むこともできる)が、丸ごとFacebookに掲載されるわけです。つまりユーザーからみると、Facebookのニューヨーク・タイムズによる投稿から、リンクをたどってニューヨーク・タイムズのサイトに移り記事本文にたどりつく、というプロセスが必要なくなる、そのタイムラグがほとんどなくなるのです。

ただこのニュース、日本では13日〜14日に報じられたものですが、正直にいうと始めは「Instant Articles」の内容がよく分かりませんでした。ピンとこなかった。
以下は、13日〜14日の、ウェブ上の主だったニュース記事のタイトルです(どこがどのメディアかは伏せています)。

  • Facebook、メディアの記事を公式モバイルアプリ内で読める「Instant Articles」
  • Facebook、モバイル向けWEBコンテンツ制作・配信サービス「Instant Articles」を開始
  • フェイスブック、「Instant Articles」を開始  NYTimes、BuzzFeedなどの記事を「囲い込み」
  • Facebook、モバイルアプリで記事読み込みを高速化–新機能「Instant Articles」を発表
  • カギは可処分時間 欧米メディア大手9社、Facebook上でコンテンツ収益化狙う
  • Facebookがメディアにユーザデータと広告収入を保証する高速ニュースサービス
  • Facebook、出版社向けニュース配信サービス「Instant Articles」開始
  • タイトルの方向性が見事にバラけていませんか。「Instant Articles」が分かりにくいのは、ひとつには「Facebook」「メディア」「広告主」「ユーザー」、それぞれに関連があるので、価値が多面的だからなのではと思います。どの立場からの視点かによってタイトルも変わってきますから。
    (私はこのうちの1本を目にしていたのですが、タイトルに引っぱられて、さらっと流してしまいました。タイトルがいかに大切か、改めて体験することができました‥‥)

    そしておそらくは、これが新しい概念だから、ではないでしょうか。ソーシャルとメディアの融合とでもいいますか、"政略結婚"とでもいいいますか──。

    ■「Instant Articles」がもたらすものとは

    Facebookのメディア向け発表資料によると、「多くの人が記事をシェアして楽しんでいる、しかしモバイルではリンク先の元記事を表示させるのに平均8秒かかっていた、その時間を『Instant Articles』の導入によって10分の1に短縮させることができた」ということがまず書かれています。そこを改善したかったのだと。

    しかしよく考えると、シェアされた記事をタップしてリンク先の外部のウェブページを表示させる行為は、ユーザーが能動的に行うものであり、そこで生じる8秒の待ち時間については、基本的にFacebookに責任はない。それなのに「フェイスブックでシェアされた記事の、リンク先の元記事を読みにいくというユーザーの不便を解消したい」と考えたのならすごいな──と思ったのですが、これはユーザーのためというより、提携先のメディアのための解決策と考えたほうがよさそうです。

    やはり見るべきは、本来ならリンク先にあった記事を、動画や音声や写真の拡大といった機能を含めつつFacebookに取り込み、広告収入の面で提携メディア各社にもメリットを生じさせつつ、Facebookからユーザーが出て行かないようにしてしまう、いってみればFacebookがメディアにもなってしまうという点なのではないでしょうか。

    最近、Facebookページ等で紹介させていただいているように、
    https://www.facebook.com/editorialinternet/posts/1582590102018835
    https://www.facebook.com/editorialinternet/posts/1566774240267088
    「分散型コンテント/コンテンツ」(distributed content)という考え方に注目が集まっています。
    ウェブメディア、すなわちBuzzFeedや、NowThisなどが、一部またはすべての記事を、直接FacebookなどのSNSに流していくというやり方です。これらは主に動画であり、動画ならば「Instant Articles」以前でも可能な見せかたです。

    今度はそのdistributeの対象であるFacebook自体が、分散型コンテントを掲載しやすくする仕組み(一種のCMSか)をつくった。動画のみならず、大きめの写真、長文のテキストなどもFacebookの投稿記事として読まれるようになるのです。

    「Instant Articles」の当初のパートナーは、ニューヨーク・タイムズ、ナショナル・ジオグラフィック、バズフィード、NBC、アトランティック、それにイギリスのガーディアン、BBC、ドイツのシュピーゲル、ビルト。そうそうたるメディアのなかに、バズフィードが入っています。

    いやはや、デジタルになると、こんなことが現実になるのか、というのが目下の感想です。

    しかし「分散型コンテント/コンテンツ」というネーミングは、メディア側の視点からのものなので、また違った言葉が出てくるかもしれませんね。


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