原稿の装いは「ですます調」か「である調」かで、ある程度決まってくる。ではどちらを選ぶか

今回はライティングについて。これは紙でもウェブでも、基本的には共通していますが、原稿を書くとき、まず「ですます調」か「である調」かを選ぶことになります。

「ですます調」は、説明するまでもありませんが、ていねいな文体になります。広い意味で”お客さん”を対象にした文なら、こちらにします。このブログもそうです。服装でいえばスーツみたいなものです。

短所としては、冗長になることがありますね。また、あまりに丁寧すぎると、読み手が不快に思うこともあります。

一方の「である調」は、簡潔で、切れ味のある文章になります。小説や自分のための日記。あるいはマニュアル的なものなどで用いられます。服装でいえば普段着ですね。

短所としては、普段着なわけですから、読み手が失礼だと感じることもあります。

両方をミックスしてもOK

ところで記事の頭から「どちらを選ぶか」と書いていますが、それほどきっぱりと分別することもありません。基本は「ですます調」で、そのなかで、テンポアップしたい、アクセントをつけたい、といったところで「である調」にしてみてもよいのです。
そうすると、文章を引き締まったものにすることができます。あるいはリズム感が出ます。音楽でいうシンコペーションのような、(ちょっと専門的ですが)二拍三連のようなテンポを刻むことができます。

たとえば。
「その試合、こてんぱんにやられてしまいました。完敗でした。その後、いつもの店で反省会となりました」は、

「その試合、こてんぱんにやられてしまいました。完敗。その後、いつもの店で反省会となりました」
ともできます。いわゆる体言止めです。

「電車にはいろいろな人が乗っています。昨今はスマホをいじっている人が多数派ですが、本を読む人もいますし、新聞を広げる人もいますし、手にコーヒーを持った人もいます。時には化粧をする人も見かけます」

と、列挙するときは、以下のように簡潔にまとめてもいいですね。

「電車にはいろいろな人が乗っています。昨今はスマホをいじっている人が多数派ですが、本を読む人、新聞を広げる人、手にコーヒーを持った人など実にさまざま。時には化粧をする人も見かけます」

「春に咲く花は美しいものですが、まだ冬が終っていない時期の、わずかに赤身を帯びたかたい蕾というのも、また美しいものですね。この季節の密かな楽しみです」

このような文では、形容詞で区切ってみてはいかがでしょうか。

「春に咲く花は美しいものですが、まだ冬が終っていない時期の、わずかに赤身を帯びたかたい蕾というのも、また美しい。この季節の密かな楽しみです」

私のような者が例文を挙げるというのもどうか、と思いましたが、ないよりはあったほうがイメージしていただきやすいかと思いまして、いくつか考えてみました。少しはヒントになるでしょうか。

最後に「ですます調」とか「である調」とか、そういう次元ではもはやないようなお手本を引用させていただきます。作家である橋本治氏の文章です。
(『橋本治の相変わらず役に立たない話 第12回「色気について」』[2013年04月13日]より)
http://wpb.shueisha.co.jp/2013/04/13/18557/

むずかしい話のようですが、たとえば「壇蜜に迫られたらどうする?」という仮定を考えてみましょう。そういうことを考えると、その仮定そのものがありえないということは分かります。というのは、壇蜜が「迫る女」ではなくて、「一歩引いて待ち受ける女」だからですね。実際はいざ知らず、それが壇蜜のキャラだから。

ヴァラエティ番組に出た彼女は腰を少しひねるようにして座る。そうすると、どちらかの肩が後ろに下がるようになる。これが「来て」の待ち受けポーズですね。「来て」系の女は自分から前に出ない。一歩か半歩下がって、男との間に微妙な距離感を作り出す。それが「来て」と言っているような微妙な隔たりだから、男は思わずその一歩を踏み出してしまう。つまり、「色気」というのは、「相手が思わず一歩踏み出して手を伸ばしたくなってしまうようなもの」で、「さァ、かかって来なさいよ」的なセックスアピールとは違うということですね。

早い話、色気は「引き」です。前に出るような自己主張はしません。離れたところで光っている。だから「あれはなんだ?」と思って近寄りたくなる。離れたところから見ても「あれはなんだ?」と思わせるようなものがあるから、「なにか」はある。「なにか」があるから輝いて見えるし、吸引力もある。しかしそれは自己主張ではない。色気にとって自己主張というのは大敵で、それをすると色気の光が曇って台無しになる。

作家の手による、レベルの高い見本です。料理のレシピのようにほいほいと採り入れるようにはいきませんが、ご参考まで。

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